大阪・関西万博に出展しました!:2025-08-29
- PtBio Inc.
- 4 日前
- 読了時間: 7分
バイオDX産学共創拠点は2025年8月14日~19日の6日間、大阪・関西万博「わたしとみらい、つながるサイエンス展」に出展しました。
6日間で7万人を超える方が来場され、アレルギー低減卵の取組みに期待と応援の言葉をいただきました。

当拠点では、「みんなで食べる喜び:アレルギー低減卵の科学と未来」と題して、広島大学の研究内容を展示。動画やポスター、スタッフによる説明で、多くの方がアレルギー低減卵について関心を高め、理解を深めてくださいました。
「卵を含む?含まない?食品クイズ」に挑戦してくれた子どもたちは、意外な食品に卵が含まれていることを知り、楽しみながらも驚いたようすでした。
また、アレルギー低減卵が製品化された未来への願いを卵型のカプセルに込める「FutureEgg」には、1,000件を超えるメッセージをいただきました。なかには研究者・開発者への応援メッセージもあり、関係者でひとつひとつ大切に拝見しました。
予想を上回る多くのご来場をいただき、誠にありがとうございました。
広島大学では、例えば将来、卵アレルギーの人でも安心して卵を食べられる、そんな未来を目指して、今後もゲノム編集技術を用いてアレルギーの原因物質を取り除くことに取り組んでいきます。
■Q&A
期間中、ご来場の皆さまからいただいた質問の一部をご紹介します。
Q.アレルギー低減卵は普通の卵と比べて、オボムコイドを含まない以外にどんな違いがありますか?
A.アレルギー低減卵の方が加熱したときに少しだけ固いという性質があります。これは敏感な人が気付くかどうかくらいの差で、加工(例えば、プリンやクッキーなどにするときに)の技術で対応できるものです。そのほかの基本的な栄養素は、大きく変わりません。オボムコイドは本来、卵白中に約11%の割合で存在するのですが、卵白の総タンパク質量もほぼ変わりません。オボムコイドが少なくなっている分、他の主要な卵白タンパク質がそれを補うように少しずつ増えている程度の僅かな差はあります。
Q.なぜすべてのアレルギー関連遺伝子でなく、オボムコイドだけをなくすのですか?
A.卵のアレルゲンは主要なものが6種類(卵白4種/オボムコイド含む、卵黄2種)あり、その他にもマイナーなアレルゲンも数種類あります。このアレルゲンのうちオボムコイド以外のアレルゲンは、加熱加工によりアレルゲンとしての性質がなくなるので、オボムコイドをなくすことで卵アレルギーの方でも食べられる卵加工食品ができると期待されます。
Q.ゲノム編集には、CRISPR/Cas9を使っているのですか?
A.CRISPR/Casは使っていません。Platinum TALENという広島大学の独自技術を使っています。
Q.アレルギー低減卵はいつ頃実用化される予定ですか?
A.詳細の時期は未定ですが、現在、食物アレルギーの専門病院(相模原病院)の協力を得て、アレルギー患者を対象にした臨床研究を実施中で、また、キユーピー株式会社とともにアレルギー低減卵を使用した卵加工食品(クッキー、プリン等)の試作を行っています。
Q.市場投入までにはどのような壁がありますか?
A.壁はたくさんありますが、まずは実用化のために生産規模(鶏舎ひとつで最低数万羽以上)のスケールアップが必要であること、さらにゲノム編集食品に対する消費者の理解と信頼を得るためのコミュニケーションなどがあります。
Q.生卵の状態で市販してほしいです。
A.アレルギー低減卵には、オボムコイドは含まれていませんが、他のアレルゲンとなるタンパク質は含まれており、完全にアレルギーフリーではありません。オボムコイド以外のアレルゲンは加熱すると大幅に低減することがわかっており、商品として提供する際は基本的に加熱が必要で、生卵は難しいと考えています。以上より、アレルギー低減卵の社会実装については、オボムコイドが含まれていないこと、加熱処理により他のタンパク質のアレルゲン性が低下していることを確認してお届けするという形になるだろうと考えています。
Q.製品化された際には、ゲノム編集食品であることを表示されますか?
A.ゲノム編集食品であることの表示に加えて、卵アレルギーに関する表示についても検討していきます。従来のガイドラインで充分かどうかも含めて、国との相談が必要と考えています。
Q.ゲノム編集による副産物が出ないことは、どのように証明するのでしょうか?
A.オボムコイド遺伝子座からのゲノム編集による副産物はある程度予想できており、その予想産物に対する抗体を作製し、その抗体ではアレルギー低減卵中から副産物が検出されないことを確認しています。その他にも、全ゲノムシーケンスにより標的のオボムコイド以外のタンパク質をコードしている領域に変化がないことが確認され、卵白タンパク質のプロテオミクス解析では、アレルギー低減卵は通常卵と比べて大きな変化が起きていないことが確認されています。
Q.鶏にゲノム編集を施すこと自体は、倫理上問題ないのでしょうか?
A.スーパーに並んでいるほとんどの野菜や果物、畜産物は長い歴史の中で品種改良を受けています。例えば、ブロッコリー、カリフラワー、キャベツ、芽キャベツ、ケールなどはすべて同じ原品種を品種改良して作られた野菜です。
鶏が家禽として飼育されだしたのは約4000年前で、アジアに広く分布する『赤色野鶏』という原品種が、現在の鶏のルーツだと言われています。紀元前1500年ごろの古代エジプトの古文書に、すでに鶏が毎日のように産卵しているという記述があるそうで、野鶏が産卵期に10個程度の卵しか産まないことを考えると、当時すでに鶏が産卵用に品種改良されていたことが分かります。
このように、現在家禽として利用されている鶏や、牛・豚などの家畜も、すでにヒトの利害で変化を起こしてしまった生物です。ゲノム編集技術や遺伝子組み換え技術でみだりに生物を変え、生態系を壊すことはあってはなりませんが、ヒトが利用しやすいような新たな付加価値を持つ生物を生み出し、しっかりと管理して利用していくことはこれまでも行われてきましたし、これからも行われていくと考えます。
なお、ゲノム編集による鶏の健康への影響は重要な要因と考えており、少なくとも数年(通常の産卵鶏が飼育される期間)にわたり鶏への影響を確認していく予定です。研究においても、採卵鶏の飼養管理指針に則り管理するとともに、1羽1羽の健康管理を徹底しており、これまでに鶏の健康への影響は確認されていません。
Q.ヒトにゲノム編集を施すなどして、ヒトのアレルギーを完治させることはできないのでしょうか?
A.ヒトの細胞にゲノム編集を施すことは技術的には可能です。ただし、生殖細胞や胚をゲノム編集の標的とすることは倫理的に認められていません。治療目的で患者本人の体細胞に対してゲノム編集をおこなうことは倫理的にも認められており、すでに治療薬として米国で承認されているものもあります。
アレルギー体質は遺伝的要因が大きいと言われているため、遺伝的である以上ゲノム編集技術による改善はできる可能性があります。体細胞へのゲノム編集でアレルギー問題が解決できればとても有用な技術になるかもしれません。
Q.その他のアレルギー(ナッツ、牛乳、小麦など)に取り組む予定はありますか?
A.対象の生物が変わると、必要な技術や専門性が大きく変わるため、今のところ、ナッツや牛乳、小麦などの他のアレルギーに取り組む予定はありません。
■「わたしとみらい、つながるサイエンス展」とは

本イベントは、2025年の大阪・関西万博の会場で開催される、大学をはじめ企業や自治体が協働する研究プロジェクトの成果を発信するイベントです。サイエンスがつなぐ未来社会の姿を身体で感じることで、未来を担う世代が社会課題を自分ごととして捉え、それぞれが主役となり「未来にどんな社会を作りたいか」を考えてもらうきっかけづくりを目的に、文部科学省主催により開催されました。
期間:2025年8月14日(木)~19日(火)
会場:大阪・関西万博会場(夢洲)EXPO メッセ「WASSE」North